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2015年5月8日金曜日

千葉市内野第1遺跡 大規模落し穴猟のイメージ(補足)

015.04.20記事「千葉市内野第1遺跡 縄文時代大規模落し穴シカ猟」の補足をします。

上記記事では次の土壙列について次の検討を行いました。

土壙列(落し穴列)の工夫の相違

このうち、2号土壙列を使った狩の様子のイメージを次に示します。

2号土壙列を使った狩のイメージ

この狩方法は、カナダアルバータ州で先住民が行ってきた崖を利用したバッファロー狩と、崖(斜面)の利用、獣の集団行動特性の利用という側面で類似しています。

Head-Smashed-In Buffalo Jampのイメージ

Head-Smashed-In Buffalo Jampの狩方法

私は、千葉市内野第1遺跡の大規模落し穴猟の方が人工狩施設を大規模に作ったという点で、Head-Smashed-In Buffalo Jampより狩技術は高度に発達していたと考えます。

2015年4月20日月曜日

千葉市内野第1遺跡 縄文時代大規模落し穴シカ猟

縄文時代土壙列を地形図にプロットできましたので、それを利用して大規模シカ猟について考察します。

「千葉市内野第1遺跡発掘調査報告書 第Ⅰ分冊」(2001.3、株式会社野村不動産・財団法人千葉市文化財調査協会)では土壙列を1号列と2号列に区分していますが、土壙列を狩猟のための落し穴列としてみると、次図にしめすような3つの装置として区分することができます。

狩猟装置としての土壙列区分とその狩猟範囲

1号土壙とされるものはAとBに区分できます。図面をよく見るとAとBは間が大きく離れるとともに、土壙の大きさも異なり、また延長線がずれていて連続していません。
さらに、

Aは台地上にありますが、Bは段丘崖の下にあり用途が異なるものと結論付けることができます。

1号土壙列Aは台地上の獣をその場で捕える落し穴列のようです。

1号土壙列Bは台地面を追ってきたシカを斜面に追落し、斜面下に設置した落し穴で捕える装置です。

2号土壙列は台地面を追われたシカが斜面を下リ始めたその時その場に設置した落し穴で、シカの不意を打つ装置であり、地形に沿って設置された様子はその工夫の程度の高さを確認することができます。

1号土壙列Bは斜面を下るシカがスピードを上げたため、落し穴を避けきれないという運動特性を利用しますが、2号土壙列では台地面を逃げてきたシカが斜面を下ろうとするその瞬間にこれまで見えなかった落し穴を通過させるという不意打ちを狙うもので、巧妙な仕掛けです。

狩猟効果としては1号土坑列Bより2号土壙列の方がはるかに効果的であると考えられます。

また、2号土壙列の土壙の大きさが1号土壙列Bより大きいことや2号土壙列は斜面地形に沿って(等高線に沿って)設置するという測量技術的工夫がされていますが、1号土壙列Bは直線的で微地形を利用するという発想が虚弱であることがわかります。

このような比較から、1号土壙列Bと2号土壙列の間には時間の隔たりが存在し、2号土壙列の方が新しいものであることが確実です。

1号土壙列A、B、2号土壙列ともに、シカ等を追う際に、シカ等が確実に落し穴の方向に向かうように、逃げるシカ等の方向を限定するための障害物レーンが設けられていたと想像します。

カナダアルバータ州のHead-Smashed-In Buffalo Jampの例ではバッファローを崖に誘導するレーンには障害物が置かれる他、焚火や大きな獣皮を振る勢子がその役割を果たしました。

土壙列(落し穴列)の工夫の相違

なお、落し穴のサイトでは次の図に示したような工夫がされ、追い詰めたシカが全て落し穴に落ちるような工夫がされていたと想像します。

落し穴付近における工夫(想像)

これだけの落し穴列を利用する猟は恐らく数十人を下らない統制のとれた多人数集団が従事した活動であると思います。

また、新旧2列の落し穴列が存在することから、縄文時代の相当長期間にわたって、この場所でシカ猟が行われてきたと考えて間違いありません。

落し穴で捕えたシカは低地(勝田川谷底)の水流を利用して解体処理加工され、干し肉や皮革製品となり、恐らく交易品として利用されたものと考えます。

台地の斜面を利用した大規模猟、低地の水流を利用した解体処理加工などの様子は狩猟対象こそ違え、Head-Smashed-In Buffalo Jampの例と酷似しています。

2015年4月18日土曜日

千葉市内野第1遺跡 縄文時代土壙列と地形

1 土壙列と地形との関係
千葉市内野第1遺跡から出土した縄文時代土壙列と地形との関係が気になります。
報告書(「千葉市内野第1遺跡発掘調査報告書 第Ⅰ分冊」(2001.3、株式会社野村不動産・財団法人千葉市文化財調査協会))をよく見ると、地形が出ている図面がありました。

千葉市内野第1遺跡縄文時代遺構に見られる土壙列

第2列は台地崖の中腹付近、第1列は台地崖中腹から崖を斜めに横断して低地まで伸びています。

このような仕掛けにより、鹿群の追い込み落し穴猟をしたのだと思います。

台地面にいる鹿群を追い込んで来て、崖を下らざるを得ないようにして、斜面を加速した鹿群が落し穴に落ちざるを得ないような各種工夫をしておいたのだと思います。

大規模な落し穴猟ですから、台地面の様子が判らないと、どのように鹿群を追い込んだのか、わかりません。

そこで、周辺の台地地形の様子を見ることにします。

2 土壙列と周辺地形との関係

報告書では遺跡発掘区域をより広域的な図面とか一般地図にプロットした情報が一切ありません。
遺跡発掘区域の正確なGIS上の位置を知ることはできませんでした。

しかし、1960年代千葉市都市図(航空写真測量図)をみると、そのなかのコンターと上記土壙列図面のコンターが類似する箇所を見つけだすことができました。

1960年代千葉市都市図と土壙列配置図との対応

測量が違いますから1本1本のコンターは対応しませんが、地形そのものは精度の高い対応を示すオーバーレイ関係をつくることができました。

この情報操作により広域地形と土壙列の正確な対応関係情報を得ることができました。

1960年代千葉市都市図に土壙列をプロットすると次のようになります。

千葉市内野第1遺跡縄文時代遺構の土壙列の開発前地形における位置

この周辺地形の中での土壙列位置情報から、この土壙列をつかった狩猟方法について検討してみます。 つづく

……………………………………………………………………
参考 開発後の現在地図に土壙列をプロットすると次のようになります。

千葉市内野第1遺跡縄文時代遺構の土壙列の位置

2015年4月16日木曜日

千葉市内野第1遺跡 縄文時代遺構の土壙列に注目する

最近、ブログ「花見川流域を歩く」で千葉市内野第1遺跡の古墳時代の事象について検討しました。2015.04.08記事「千葉市内野第1遺跡古墳時代集落の消長について」等。

その記事を書いている時、千葉市内野第1遺跡の縄文時代遺構に規模の大きな土壙列があることを知り、強い興味を覚えました。

ブログ「花見川流域を歩く」では現在古墳時代と奈良平安時代を対象にして、花見川-平戸川筋の東海道水運支路(仮説)について検討しています。
そのため、縄文時代の記事を書くとブログ記事の歴史考古に関するシークエンスが散らかるような印象になります。
そこで、この番外編ブログで記事にして、後々にブログ「花見川流域を歩く」で縄文時代の本格的検討をする時の予行演習をしておくことにします。

1 土壙列の姿

土壙列の分布図

土壙の形状 例
「千葉市内野第1遺跡発掘調査報告書 第Ⅰ分冊」(2001.3、株式会社野村不動産・財団法人千葉市文化財調査協会)より引用

報告書では次のような説明がされています。(要約)
1号土壙列(北側)は、標高30mから低地部分までの230mにわたって台地を横断する形で計36基が検出されている。さらに数基の存在が考えられる。住居跡等に切られている土壙がある。
2号土壙列は42基が標高20mのラインに沿って約200mに亘り弧状に分布する。住居跡に切られている土壙がある。
土壙は陥穴群と思われ、規模は長軸2m~3m、短軸1m~2m、深さ1~2mで、底面が細くなり断面がV字状をなすもので底面施設はない。土壙間の間隔は、3m~4mであるが、一部が欠落したり、間延びしている部分もあり、一定していない。構築時期については、住居跡との重複関係から古墳時代前期より古いと想定できるが、明確な時期決定はできない。

2 土壙列による狩対象と狩方法
内野第1遺跡の縄文時代以降からは多量の獣骨が出土しています。
報告書では骨の破片7776点を同定したところ、シカが破片数2071点で最も多く、次いで破片数626点のイノシシ類であったとしています。
従って、土壙列はシカを主なターゲットとした大規模な追い込み猟の施設であったことが考えられます。

以前ブログ「花見川流域を歩く」でカナダ原住民のHead-Smashed-In Buffalo Jamp(※)を紹介したことがありますが、狩猟対象こそ違え、その狩猟方法とこの内野第1遺跡落し穴猟はその大規模性が似ているかもしれないと直感し、興味を魅かれます。
※ ブログ「花見川流域を歩く」2014010.24記事「旧石器時代の狩方法」等多数記事参照

この土壙列を使った追い込み落し穴猟がどのようなものであるか、その大規模性、組織活動性に着目して、この番外編ブログで順次検討したいと思います。