2020年6月23日火曜日

数センチ程度小展示物の学習用3Dモデル資料について

2020.06.20記事「カメラ焦点距離と3Dモデル再現忠実性」と同じ実験を別の小土偶で行い、小展示物の学習用3Dモデル資料の作り方について考えてみました。

1 カメラ焦点距離の違いと3Dモデル資料の違い
ア 焦点距離の違いによる写真の様子

焦点距離14.00㎜(35㎜換算28㎜)写真例
展示ショーケース外側にスケール(ファイバー製折尺)を置いて撮影しています。

写真情報

焦点距離150.00㎜(35㎜換算300㎜)写真例

写真情報

イ 3Dモデル結像

焦点距離14.00㎜(35㎜換算28㎜)写真による3Dモデル結像(切り抜き前)
展示ショーケース外側に置いたスケール(ファイバー製折尺)をつかって3Dモデルに実寸法を付与できます。

焦点距離150.00㎜(35㎜換算300㎜)写真による3Dモデル結像(切り抜き前)

ウ 対象土偶の3Dモデル切り抜き

焦点距離14.00㎜(35㎜換算28㎜)写真による3Dモデル結像(切り抜き後)

焦点距離150.00㎜(35㎜換算300㎜)写真による3Dモデル結像(切り抜き後)
焦点距離の短い写真で作成した3Dモデルは対象物の凹凸が平滑化されてしまい、焦点距離の長い写真から作成した3Dモデルと比較するととても使えるものではありません。
しかし、焦点距離の短い写真から作成した3Dモデルだけを見るかぎり、それで満足してしまうかもしれません。

2 学習用3Dモデル資料の作成方法
ア 3Dモデルカタログ資料の作成
多くの展示館では小展示物を所せましと多数展示する傾向があります。これらの展示物全部に対して個別の深い興味を持つことはまれです。したがって展示物全体をカメラ固定最短焦点距離で撮影して3Dモデルを作成し、それを3Dモデルカタログ資料として活用することが考えられます。個別展示物の3D再現性は大いに限界があることを知っていれば役立つ学習資料になると考えます。
また3Dモデルを作成するためには多数写真を撮影しますから、その写真のなかから有用なものをトリミング拡大して使うことも可能になります。写真には再現忠実性の問題はありませんからピントが合っていれば使い勝手のよい資料になります。

イ 3Dモデルに実寸法を付与するための資料
1の3Dモデルカタログ資料作成において、展示ショーケースの前にスケールを置けば3Dモデルに実寸法を付与できます。

ウ 3Dモデル本資料の作成
特別興味のある対象展示物が小さい場合はカメラ焦点距離を長くして(ズームレンズで拡大して)撮影し3Dモデルを作成することが必須です。(と気が付きました。)

3 まとめ
展示物に対する興味の強弱によって異なってくると思いますが、当面次のような考えで展示物学習用3Dモデルを作成することします。
ア なんとなく興味のある小展示物…3Dモデルカタログ資料作成
イ 興味がある小展示物…3Dモデルカタログ資料作成+3Dモデル本資料作成

4 参考 3Dモデル作成用撮影時間
上記3Dモデル本資料作成ではカメラシャッターを64回押しましたが、その時間は5分17秒でした。次から次へと観覧者が訪れる混在する展示館での3Dモデル用撮影はできませんが、5分間くらいは人が途切れる程度の展示館では3Dモデル用撮影が他の観覧者の邪魔になることはほとんどないとおもいます。現実にはほとんどの展示館で開館時間の大半が無人といってよい状況がありますから、無人時間を狙って行う私の3Dモデル用撮影に対して展示物達は喜んでいると思います。

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この記事の対象遺物である縄文後・晩期土偶(千葉市加曽利貝塚)は次の記事で詳しく検討しています。
ブログ花見川流域を歩く2020.06.22記事「もっこふんどし着装縄文後・晩期土偶

2020年6月20日土曜日

カメラ焦点距離と3Dモデル再現忠実性

展示考古遺物で小さいものの3Dモデルを作成する場合、カメラ焦点距離変化がどの程度再現忠実性にかかわるのか体験実験をしてみました。

1 3Dモデル再現忠実性実験対象の対象

縄文後期初頭?円錐形土偶(千葉市加曽利貝塚)
加曽利貝塚博物館展示
胴部長径3.2㎝、短径2.7㎝、高さ3.9㎝(3Dモデルから計測)

2 実験した焦点距離
利用カメラはolympus om-d e-m5 mark2。

ア 14.00㎜(35㎜換算28㎜)(カメラズームレンズの最短焦点距離)

焦点距離14.00㎜(35㎜換算28㎜)写真

イ 150.00㎜(35㎜換算300㎜)

焦点距離150.00㎜(35㎜換算300㎜)写真

3 3Dモデルの再現忠実性 結果

オルソグラフィック投影 正面から 左焦点距離150.00㎜、右焦点距離14.00㎜

オルソグラフィック投影 左から 左焦点距離150.00㎜、右焦点距離14.00㎜

オルソグラフィック投影 右から 左焦点距離150.00㎜、右焦点距離14.00㎜

オルソグラフィック投影 上から 左焦点距離150.00㎜、右焦点距離14.00㎜

4 体験実験の感想
焦点距離による3Dモデル結像の違いを対照比較すると、焦点距離150.00㎜の方が14.00㎜と比べて再現忠実性がはるかに高い結果となりました。3Dモデル作成ソフト(3DF Zephyr Lite)が対象物結像に使う情報量の差であると考えます。
この実験により、3Dモデル結像再現忠実性について感覚的に体感できたことはすばらしいことです。
これまでは縄文土器という比較的大きな遺物展示物の3Dモデル作成活動がメインであったため、ズームレンズの利用はわざと封印して、それで結果的にはバランスのとれたモデルがつくられてきたのだと思います。しかし、対象物が数㎝×数㎝×数㎝程度のものの撮影はこれからはズームレンズで拡大して撮影することを多用することにします。
なお、撮影途中で焦点距離を変化させると3Dモデル作成ができなくなりますので、1度設定したズームレンズの位置は最後まで変更できません。

5 3Dモデル

縄文後期初頭?円錐形土偶(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル
加曽利貝塚北貝塚1-1区Dトレンチ出土
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2020.06.17
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 38 images
カメラ焦点距離 150.00㎜

簡易版3Dモデル 縄文後期初頭?円錐形土偶(千葉市加曽利貝塚)
加曽利貝塚北貝塚1-1区Dトレンチ出土
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2020.06.17
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 47 images
カメラ焦点距離 14.00㎜

2020年6月11日木曜日

地理院地図3DモデルのBlenderインポート

はじめてのBlender操作学習の一環として地理院地図3DモデルをBlenderにインポートしてみました。

地理院地図3DモデルをVRMLダウンロードします。

VRMLダウンロード画面

このファイル(dem.wrl)をMeshLabにインポートして、それをobjファイルとしてエクスポートします。

MeshLab画面

Blenderではそのobjファイルをインポートできます。
Blenderに地理院地図3Dモデルを取り込めば、それを操作対象として扱うことができますから、考古遺跡に関する地形学習上有用です。

Blender画面
Blenderに2つの地理院地図3Dモデルをインポートして並べてみました。

この2つの3Dモデルを並べた3DモデルをSketchfabに投稿してみました。

加曽利貝塚付近の地形 地理院地図3Dモデル 地図及び写真 垂直倍率×9.9
dem:5mメッシュA
Blenderで編集

BlenderGISやDEM-Net Elevation APIで取得できる地形3Dモデルは最精細情報が30mメッシュです。一方地理院地図3Dモデルでは5mメッシュあるいは10mメッシュが使えますので、精度としては地理院地図3Dモデルがはるかに優れています。

2020年6月10日水曜日

Blenderで3Dモデルを並べる

はじめてのBlender操作テクニック習得活動の一環として既存の土器3Dモデルを3つ集めて並べてみました。ヨロヨロしながら、つまづきながらなんとかできました。

1 抽象文土器、藤内式土器、称名寺式土器 観察記録3Dモデル

抽象文土器、藤内式土器、称名寺式土器 観察記録3Dモデル
抽象文土器:茅野市辻屋遺跡、尖石縄文考古館、2019.09.13撮影、3DF Zephyrで生成(44写真)
藤内式土器:伊那市金鋳場遺跡、伊那市創造館、2019.09.12撮影、3DF Zephyrで生成(60写真)
称名寺式土器:千葉市餅ヶ崎遺跡、加曽利貝塚博物館、2019.12.27撮影、3DF Zephyrで生成(93写真)
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縄文中期前半抽象文深鉢形土器(茅野市辻屋遺跡)C 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 44 images

藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 60 images(Masquerade機能利用)

称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images

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抽象文土器、藤内式土器、称名寺式土器 観察記録3Dモデルの動画
3DF Zephyr Liteで作成

2 感想
既存3Dモデルを集めて一つの3Dモデルをつくることができるという原理がわかったことは大成果です。あとは台座とか背景とか説明パネルとかを添付して、さらに見栄えや正確性に関する各種作業を精緻化すればそれなりの自作展示場風の集成3Dモデルができます。別の展示施設の土器3Dモデルを3D画面のなかで比較検討する資料をつくることがこれでできるようになりました。
Blenderの価値の大きさにあらためて感動します。

2020年6月8日月曜日

BlenderGISの試用

BlenderGISを使ってこれまで気軽にできなかった広域地形のデフォルメ3Dモデルを作成してみました。

1 BlenderGISによるアラル海付近地形3Dモデル 垂直倍率:×500

アラル海付近地形3Dモデル 垂直倍率:×500
BlenderGISで3Dモデル作成
3Dモデル3DF Zephyrをアップロード v4.530

BlenderGIS作業画面

3Dモデルの動画

2 BlenderGIS試用メモ
東西約450㎞、南北約410㎞の範囲の地形3Dモデルを作成し、低平な地形をわかりやすく浮かび上がらせるために垂直倍率を500倍にしました。このような広域かつデフォルメ3Dモデルを何の準備もなく気軽にできるのはBlenderGISだけです。
残存したアラル海(細長い西部分)の写真と起伏が合っていません。これは広域の地形3Dモデルを作成するとファイル容量を抑制するためにBlenderGIS自身がメッシュの大きさを自動で大きくしているためのようです。このモデルでは全体が5㎞メッシュで作られているようです。
狭い範囲の3Dモデルをつくるとより現実の地形に即したものになることは確かめました。最も精細なメッシュの大きさは30mメッシュになります。

今回の作業では、BlenderGISによる3Dモデルの作成→OBJファイルエクスポート→3DF Zephyr LiteにOBJファイルインポート→Sketchfab投稿及び動画作成を行いました。

下に示す地図パネルの前に地形3Dモデルを置いた展示状況風3DモデルをBlenderでつくる予定でしたがとりあえずつまづいてできませんでした。原理としてはできることは確かめてあります。
つまづいた理由は地形3Dモデルの大きさ450㎞×410㎞を数10cm×数10cmにまで約100万分の1にまで縮小できなかったことです。Blenderの中は実寸法の世界であることを思い知らされました。オブジェクトの縮小は1/1000が限界のようです。1/1000に縮小するとソフトがハングアップしますから実用上は数百分の1程度かもしれません。

参考 地図パネルの写真


2020年6月1日月曜日

2020年5月ブログ活動のふりかえり

ブログ「花見川流域を歩く」とそのファミリーブログの2020年5月活動をふりかえります。

1 ブログ「花見川流域を歩く」
5月の記事数は29編です。
縄文早期遺跡として上黒岩岩陰遺跡、上野原遺跡について検討を深めました。上黒岩岩陰遺跡では死亡妊婦の儀礼について、上野原遺跡では石器送り場のゾーニングについて学習しました。
また草創期遺跡の神子柴遺跡と一鍬田甚兵衛山南遺跡についてその地形特性を考察しました。早期最初期頃の海岸線地理的位置に関する興味も自分に仕込みました。
縄文石器学習として各地展示館の石棒について3Dモデルを作成し興味を深めました。一鍬田甚兵衛山南遺跡出土有舌尖頭器や矢柄研磨器等について3Dモデルをつくり観察し、縄文草創期に関する興味を深めました。
さらに上野原遺跡の環状石斧や異形石器に対する興味を深め、TwitterでYoshiHRさんをはじめとする皆様から情報をいただき学習意欲を増進させることができました。
神子柴遺跡出土神子柴型石斧等石器について3Dモデルを作成して、石器出土の意義について学習しました。
なお、ブログのページビューが50万を通過しました。

2 ブログ「花見川流域を歩く 番外編」
3Dモデル作成テクニック、Google earth proに関するテクニック等の技術記事とBlender(3DCGソフト)学習開始記事等10記事を書きました。DEM-Net Elevation APIの存在を知り、その紹介記事も書きました。

3 ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」
早朝散歩記事を20編書きました。

4 ブログ「世界の風景を楽しむ」
長らくの休眠から目覚めて、過去海外旅行の反芻記事を11編書きました。DEM-Net Elevation APIで海外風景の地形3Dモデルが簡易に作れるようになったので、記事作成がより楽しくなりました。

5 ブログ「芋づる式読書のメモ」
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の目次の縄文早期にかかわる部分の学習記事を9編かきました。この9編の記事作成に関する学習が私の5月学習の軸となっています。

6 5月学習の特徴
ア 技術
●3DF Zephyr Lite技術、マスク、SfM-MVS
●BlenderとBlenderGIS
●DEM-Net Elevation API
イ 遺跡
●上黒岩岩陰遺跡…受傷人骨
●上野原遺跡の祭祀空間としての特別性
●青森県長七谷地貝塚
●佐賀県東名遺跡
●函館市中野B遺跡
●神子柴遺跡
●一鍬田甚兵衛山南遺跡
ウ 軸学習
●山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の学習
エ 古地形復元とその技術
●縄文早期の海岸線の位置の大幅な変化→土地の減少→狩猟の危機→漁労に救われる
(地形変化興味、回帰的移動生活の変化…)
海底地形…Google earth pro、水深地形…QGIS
オ 石器
●石棒 →谷口康浩著「縄文人の石神 ~大形石棒にみる祭祀行為~」(2012、六一書房)
●一鍬田甚兵衛山南遺跡出土石器(有舌尖頭器等)
●環状石斧(YoshiHRさんからの情報、上野原遺跡の情報)
●神子柴遺跡出土石器→堤隆著「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(2013、新泉社)
→大工原豊外編「縄文石器提要」(2020、ニューサイエンス社)
→上峯篤史著「縄文石器 その視角と方法」(2018、京都大学学術出版会)

7 6月活動のイメージ
●活動の軸となる学習→山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の第4章 前期・中期に関わる学習
●縄文社会消長分析学習→軸学習から派生する興味を寄り道的に学習する。
●石器学習→展示館での過去観察を資料化する。チャンスが生まれれば展示館で撮影して石器3Dモデルを作成して観察する。石器学習の体系的取り組みの在り方について模索する。
●学習技術向上→Blender技術獲得及び次の3Dツール間のファイル効率的使いまわし実現。
3Dツール→Blender、BlenderGIS、Sketchfab、DEM-Net Elevation API、3DF Zephyr Lite、MeshLab、GigaMesh Software Framework、地理院地図、QGIS、FreeCAD
●Vlog化の推進→自己流Vlog化としてブログ記事内容を象徴するような動画(アニメ)をできるだけ添付するようにします。

参考
ブログ「花見川流域を歩く」2020年5月記事
〇は閲覧の多いもの
ブログ「花見川流域を歩く 番外編」2020年5月記事
ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」2020年5月記事
ブログ「世界の風景を楽しむ」2020年5月記事
ブログ「芋づる式読書のメモ」2020年5月記事

縄文草創期有舌尖頭器(88図-30)(多古町一鍬田甚兵衛山南遺跡) 観察記録3Dモデルの動画
安山岩製、長さ5.5㎝、幅2.4㎝
千葉県教育委員会所蔵
撮影場所:千葉県教育庁文化財課森宮分室
撮影月日:2019.05.27
実寸法付与
 3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 42 images