2018年1月9日火曜日

比較研究法

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 3

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)のプロローグで比較研究法の大切さについて述べていますので、抜粋してメモしておきます。

●比較研究法
本書では、比較研究法を用いて、環境問題を要因とする社会の崩壊について解析していく。前著『銃・病原菌・鉄』(草思社刊)では、正反対の問題を扱うのに比較研究法を用いた。過去一万三千年にわたる人間社会の発展の速度が、大陸によって異なっていたという問題だ。

今度は発展ではなく、崩壊に焦点を当て、環境面の脆さ、近隣社会との関係、政治制度、その他、社会の安定性に影響を及ぼすとされるいくつかの〝入力〟変数などについて、過去と現在の多くの社会を比較する。

検討すべき〝出力〟変数は、崩壊か存続かの二者択一と、崩壊が起こった場合の崩壊の形だ。
出力変数を入力変数と結びつけることで、可能な入力変数の崩壊への影響力を導き出す。

 太平洋上の島々の森林破壊を誘因とする崩壊に関しては、この研究法を的確に、包括的に、計量的に当てはめることが可能だ。先史時代の太平洋の人々は、自分たちの島の森林を、ほぼ無傷から壊滅状態までのさまざまな段階に破壊し、その結果、自分たちの社会に、長期存続から完全崩壊までのさまざまなシナリオを演じさせた。
太平洋上の八十一の島に対して、同僚バリー・ロレットとわたしは、森林破壊の度合を等級化し、さらに、森林破壊に影響を及ぼすとされる九つの入力変数(降雨量、地理的な隔絶度、地力の復元性など)の数値を等級化した。統計学的な分析によって、われわれは、ひとつひとつの入力変数が森林破壊の結果に占める相対的な威力を算出することができた。

もう一カ所、比較実験が可能な地域として、北大西洋が挙げられる。そこでは、中世ノルウェーのヴァイキングが六つの島もしくは陸塊に入植したが、その六つは、農業への適合性、ノルウェーとの交易の利便性、その他の入力変数がそれぞれに異なり、また、たどった結末も(すばやい撤退から、五百年後の全滅、千二百年以上にわたる繁栄まで)異なっている。さらには、世界の異なる地域にある社会同士を比較することも可能だろう。

特に、ひとつの社会の事例を一般化したり、一件の崩壊について説明することで満足したりするのは危険な姿勢だと言える。異なる結末への道を進んだ多数の社会を比較研究することで得られた証拠の土台がなければ、説得力のある結論へ到達することは望めないのだ。
ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上)から引用

●感想
世界の大小文明を俯瞰して比較しながらその衰退要因について考察するという比較研究法がこの図書の最大の魅力だと感じています。
この図書における比較研究法が、今興味を持っている縄文社会の衰退や奈良平安開発集落の崩壊の比較検討方法にどのように参考になるのか、興味が湧きます。

風景

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