2018年1月15日月曜日

モンタナの大空の下

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 4

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)を読んでその抜き書きをしたり、感想をメモしたりしています。この記事では「第1章モンタナの大空の下」の感想をメモします。

1 モンタナの諸問題
現代アメリカのモンタナ州についてその素晴らしい風景の紹介と様々な社会問題、環境問題を詳しく紹介しています。
・富豪向けリゾート開発による地価の上昇と、地元農業の衰退
・鉱業が生み出す有毒廃棄物
・皆伐方式が生み出す森林破壊
・塩類による土地被害
・地球温暖化による水不足
・外来生物による被害
・貧困と富裕の分極化

モンタナ州 ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上)から引用

ハミルトン付近の光景 Google earth proから引用

モンタナの問題は日本の中山間地によくある例とそっくりであるという感想を持ちました。

最初にモンタナの例を書いた理由を著者は次のように説明しています。
 社会の崩壊に関する書物の第1章にモンタナを取り上げるのは、当初、稚気に類する試みかとも思えた。モンタナに限らずアメリカ全体を見ても、差し迫った崩壊の危機にさらされているわけではない。しかし、どうかよく考えてみてほしい。モンタナ住民の収入の半分が、モンタナ州内の仕事から生み出されるのではなく、州外からモンタナに流入してくる金なのだ。例えば、連邦政府による移転給付(社会保障、高齢者医療保険、低所得者医療扶助、貧困対策など)や、州外での私的な蓄え(州外の年金、不動産利権からの収入、事業所得)など……。つまり、モンタナ自体の経済が、すでにモンタナのライフスタイルを支えるにはほど遠いところまで落ち込んでいるということだ。むしろモンタナのライフスタイルは、モンタナ以外のアメリカに支えられ、左右されている。もしモンタナが太平洋に浮かぶイースター島、それもヨーロッパ人到達以前、先住ポリネシア人時代のイースターのような孤島だったとしたら、現在ある先進国型の経済はすでに崩壊していただろうし、そもそも、そこまでの経済を発展させることもできなかっただろう。

 次によく考えてほしいのは、ここまで論じてきたモンタナの環境問題が深刻な状況にあるとはいえ、アメリカの他州の大半に比べれば、まだ切迫感が小さいということだ。他州はほぼ例外なくモンタナより人口密度が高く、人間による環境侵害も大きく、また、多くの州が、モンタナより脆弱な環境に囲まれている。アメリカ全体についていえば、不可欠な資源を他国からの輸入に頼り、経済、政治、軍備の各面でも他国と密接に関わっている。そんな国々の中には、アメリカよりもっと深刻な環境問題に悩む国々、アメリカよりさらに急激な衰退に向かっている国々もあるのだ。」ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上)から引用

2 感想
最初に現実の社会・環境問題について認識を新たにして、それとの比較を踏まえて(比較して)過去現在の崩壊した社会の検討をするという算段です。
モンタナの例が日本と瓜二つであり、外国の例という感じ(一種の違和感)が全く生まれなかったので、吸い込まれるように本書に入ることができました。


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