2018年1月17日水曜日

イースターに黄昏が訪れるとき

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 5

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)を読んでその抜き書きをしたり、感想をメモしたりしています。この記事では「第2章イースターに黄昏が訪れるとき」の感想をメモします。

1 隔絶したイースター島の位置

太平洋・ピトケアン諸島・イースター島
ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上)から引用

ピトケアン諸島とイースター島の距離

イースター島

2 食料動物種の絶滅と森林破壊
この図書では、イースター島は西暦900年頃ポリネシア人が入る前は亜熱帯性雨林の島で、高さ30mを超える大木を含む森林がありましたが人が入ってから高木は全てなくなり、木でカヌーがつくれなくなったためイルカ漁などもできなくなり、食糧となる動物種は殆どすべて絶命した様子が花粉分析や貝塚の発掘調査結果に基づいて説明されています。
また12の氏族による巨大モアイ像設置競争が資源の枯渇により最後はモアイ像破壊競争になった様子も詳しく説明されています。食糧資源がなくなり人肉食も行われました。
1722年に初めてヨーロッパ人がイースター島を訪れた際には3mを超す樹木は1本も無くなっていました。
イースター島の人口は最盛期は15000人程度、ヨーロッパ人が訪れて人口半分の1500人を奴隷として南米に輸出したり、天然痘が蔓延した時期には100人台に減少したと書かれています。

3 森林破壊を促す9つの要素とイースター島の脆弱性
著者はイースター島がなぜこのような極端な森林破壊事例となったのか検討するために、次の9つの要素についてポリネシアの島々を検討して比較しています。

●森林破壊の激しさが増す要素
1 湿潤な島より、乾燥した島
2 赤道付近の温暖な島より、高緯度にある寒冷な島
3 新しい火山島より、古い火山島
4 火山灰が大気中を降下する島より、降下しない島
5 中央アジアの風送ダスト(黄砂)に近い島より、遠い島
6 マカテア(サンゴ礁起源の歩きにくい土地)のある島より、ない島
7 高い島より、低い島
8 近隣関係のある島より、隔絶した島
9 大きい島より、小さい島

これらの要素は次のような視点から説明されています。
1と2は森林の生育スピードに影響する気温と水
3は火山起源土壌養分の残存率
4と5は風によって運ばれてくる養分の量
6は人の活動を阻害する地表状態
7は上流から下流にもたらされる養分の量
8と9は人の森林破壊活動の集中のしやすさ

これらの変動要素に基づいて統計モデルを作って太平洋の島々を検討したところ、イースター島がもっとも森林破壊を招きやすい島の一つであることが予測され、実際に起こったことと合致しました。

このモデル検討から著者は次のように述べています。
要するに、イースター島の森林破壊が異常なほど激しく進行した理由とは、なにも島民たちがうわべだけ善良そうで中身は違ったとか、先見性がなかったとかいうことではない。むしろこの島民たちは、太平洋において、最も脆弱な環境の中で、最も高い森林破壊のリスクをかかえながら暮らすという悲運を背負った人々だった。

4 文明崩壊5つの要因からのチェック
イースター島の事例を文明崩壊5つの要因から次のようにチェックしています。

1 近隣の敵対集団からの攻撃…近隣世界から隔絶していて皆無。
2 近隣の友好集団からの支援の減少…近隣世界から隔絶していて皆無。
3 気候の変動…いまのところ証拠はない。
4 人為的な環境侵害…特に森林破壊と鳥類の殺傷
5 問題への社会の対応…環境侵害行為の背後にある政治・社会・宗教的要因。例えば、孤島という条件のせいで避難という形の移住が不可能だったこと、前述した諸々の理由から、住民の関心が石像の建設に集中していたこと、氏族及び首長同士の競争によって、より大型の石像が建造されるようになり、より多くの木材、縄、食糧が必要とされたことなど。

5 感想
著者はイースター島とグローバル化が進んだ現代世界との間に逃げる場所や助けをもとめる相手もいないという共通点があり、私たちの最悪のシナリオとして目に映ると述べています。
同時に、イースター島と同じ自滅の方向を強める危機要素があるとともに、有利に働く要素もあり、図書の最後で取り上げるとしています。
さらに読書を進め、多様な文明崩壊事例にふれたいと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿