2018年4月12日木曜日

成功を収めた社会の例

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 16

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)を読んでその抜き書きをしたり、感想をメモしたりしています。この記事では「第9章存続への二本の道筋」の最後のまとめ項目である「成功を収めた社会の例」の感想をメモします。

1 成功を収めた社会の例
図書では成功を収めた社会の例としてニューギニア高地、ティコピア島、江戸時代日本について詳しく説明してきています。
そのほかの事例として次のものをあげていいます。
●ノルウェー領グリーンランド社会崩壊と対比させたわずかな成功譚
オークニー諸島、シェトランド諸島、フェロー諸島、アイスランド
●過去2、3世紀にトップダウン方式で森林を安定、拡大させた国
ドイツ、デンマーク、スイス、フランス、その他の西ヨーロッパ諸国
●絶対君主のもとでも大規模森林再生、土壌浸食防止の段々畑造成
インカ帝国
●ボトムアップ方式
プエブロ族、グリーンランドイヌイット、オーストラリア先住民
●灌漑システムを維持している共同体
スペインの共同体、フィリピンの共同体、スイス高地の村々
●ボトムアップ方式での複雑広域の例
インド亜大陸のカースト制度の仕組み

これらの成功社会例を地図でみると次のようになります

環境問題解決事例 過去社会

図書では成功社会と崩壊社会を比べると、成功社会のほうが環境が有利で、崩壊社会の環境はより厳しいようにも見えるが、その説明は部分的なもので、環境の違いだけではすべてを説明することはできないとして、次のように結論を述べています。

グリーンランドやアメリカ南西部など、同じ環境のなかでも、ひとつの社会が成功した一方で、異なる経済を実践したもうひとつの社会、もしくは複数の社会が失敗した例もある。すなわち、環境だけでなく、環境に適した経済の正しい選択が重要なのだ。この謎に残された大きなピースは、特定の経済さえ採用すれば、社会がそれを持続可能な方法で実践するのかということだ。その経済が依存する資源――耕作用の土地、放牧用の草木、漁場、狩猟鳥獣、採集植物や小動物――にかかわらず、乱開発を避ける習慣を発達させる社会もあれば、その難題に屈してしまう社会もある。」ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用

2 感想
●インドカースト制度について
インドカースト制度について、これまで自分は、それは封建的因習であり解決すべき問題であるという側面でしか理解していませんでした。しかし、それが成立した理由として多数住民が限られた資源を有効活用するために必要な社会的棲み分けシステムであり、社会崩壊を免れるために過去社会が生み出した仕組みであると理解することができました。自分の認識の浅さを感じることができました。

●環境に適した経済の正しい選択について
環境の厳しさだけでは社会崩壊の全てを説明できないという視点は大いに参考になります。
同時に、この図書で扱っている社会はほとんど農業社会です。狩猟採取社会はオーストラリア先住民の例が極わずか触れられている程度です。
狩猟採取社会における「環境に適した正しい経済の選択」「環境に適合しない悪しき経済の選択」がどのようなものか、詳しく知りたいと思います。そのような記述はこの図書ではないので、自分で考えるほかはないのかもしれません。
縄文時代説明図書では、縄文社会消長の理由はほとんど全て環境変化によるとされていますが、本当にそうであるのか、疑問が生じています。

ジャレド・ダイヤモンド「文明崩壊」の視点は大いに参考になります。

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