2022年6月25日土曜日

3Dモデルのノイズ緩和について

 About noise mitigation of 3D model


When I posted a 3D model to Sketchfab that couldn't completely remove noise due to its complicated three-dimensional shape, I received noise removal technical advice from Mr. Thomas Flynn, the cultural property manager of Sketchfab. With that as a trigger, I tried noise reduction measures.


立体形状が複雑なためノイズ除去しきれなかった3DモデルをSketchfabに投稿したところ、Sketchfab文化財担当Thomas Flynnさんからノイズ除去技術アドバイスをいただきました。それをきっかけにノイズ軽減策を試行しました。

1 展示縄文土器のフォトグラメトリで必然的に発生するノイズ

ショーケースにガラス面越しに展示されている縄文土器をフォトグラメトリで3Dモデルにすると、ほとんどの場合ノイズ(白色部)が発生します。カメラ視線が届かないところがあるので仕方がないことです。3Dモデルを調整する際にできるだけノイズを除去します。しかし対象物が複雑な立体形状の場合はノイズ除去が技術的に困難です。また、ノイズ除去で3Dモデルがあまりにも不自然になることもあります。さらにノイズ除去に要する時間もバカにならないので、学習進行の都合上、ノイズ除去に徹底するという事に関して妥協することもあります。3Dモデル作成が主目的の活動ではなく、3Dモデルはあくまでも学習素材にすぎないのですから当然です。

2 鑑賞対象ではなく観察対象としての3Dモデル

私の3Dモデル作成は鑑賞対象としてのモデル作成ではなく、学習観察対象としてのモデル作成です。ですから、ノイズが存在していてもノイズとわかればよいので、あまり気にしないで来ました。モデルの名称も「観察記録3Dモデル」で統一して、鑑賞対象としてのモデルではないことを明確にしています。

3 Sketchfab文化財担当Thomas Flynnさんからのアドバイス

Sketchfabに「人面装飾付深鉢形土器(笛吹市一の沢遺跡) 観察記録3Dモデル」を投稿したところSketchfab文化財担当Thomas Flynnさんからつぎのようなアドバイスをいただきました。

「Thank you for sharing! I wonder if you could try using the 'select points by colour' tool in 3DF Zephyr to remove the white & orange geometry from this scan before creating a mesh: 3dflow.net/technology/documents/3df-zeph...Just an idea :)」

把手中空部分の稜線部に白いノイズが見えていて、あまりに不格好なので、見るに見かねてアドバイスしていただいたものと推察します。見よう見まねで3Dモデル作成に取り組んでいる異国高齢者にわざわざアドバイスしていただいたThomas Flynnさんに感謝感謝です。

人面装飾付深鉢形土器(笛吹市一の沢遺跡) 観察記録3Dモデル

4 ノイズ軽減の技術的取組

早速、次のようなノイズ軽減の技術的取組をしてみました。

4-1 3DF Zephyr チュートリアルの色指定によるノイズ削除(不成功)

Thomas Flynnさんご指摘の3DF Zephyr チュートリアルを読むと、色指定により指定部分メッシュを削除できます。それを試してみました。スポイトツールでノイズの白を指定すると、ノイズ以外の部分も含めて範囲指定されてしまいます。詳しくは省略しますが、いろいろ条件を替えてもノイズだけを範囲指定することは困難でした。

4-2 テクスチャ画像色塗りによるノイズ軽減(不成功)

ノイズ部分の白色部をグレーなどに色塗りすればノイズの不格好さが軽減すると考え、objファイルのテクスチャ画像色塗りを試みてみました。

現在のテクスチャ画像は人が判断できない複雑なものであるため、objファイルをUV展開して、人が見て対象が判るテクスチャ画像をつくり、そのテクスチャ画像でノイズ部分の色塗りをしたいと思い試みました。この方法は一般の縄文土器では既に実用しています。(2022.05.25記事「縄文土器3Dモデルに直接描画」)

結果はUV展開したモデルにテクスチャ画像を再度投影することが出来ませんでした。


シームを使わない場合のテクスチャ再投影3Dモデル

土器全体のテクスチャ再投影が出来ていません。


4つの把手にそれぞれシームを入れた時のテクスチャ再投影3Dモデル

把手部分だけテクスチャ再投影が出来ていません。

結果としてUV展開によるテクスチャ画像色塗りはできませんでした。

ドーナツ状中空部が複雑に入組む把手について、そのUV展開のためのシームの入れ方を工夫すればこの方法は成功すると考えられますが、この方法開発は後日の課題とすることにします。

4-3 3Dモデルに対する直接色塗り(一応成功)

Blenderで3Dモデルのノイズ部分に直に色塗りして、ノイズ影響を軽減する策を実施しました。ノイズにそのまま色を塗ると不自然になるので、「乗算」で色を塗り、不自然観を軽減しました。色は茶系統を含めて幾つか試しましたが、グレーを使いました。グレーがノイズ軽減とその部分がノイズであるという表示の双方のバランスに優れていると感じました。

ノイズ有3Dモデルとノイズ軽減3Dモデルの対照モデル


ノイズ有3Dモデルとノイズ軽減3Dモデルの対照モデル画像


ノイズ有3Dモデルとノイズ軽減3Dモデルの対照モデルの動画

ノイズの影響はかなり軽減することができました。

5 感想

私自身は、学習資料としての3Dモデルでは多少のノイズを許容しても良いかと考えています。しかし、その3DモデルをSketchfabというメディアに掲載して、極端にいえば世界各地の人々に見せています。世界各地の人々(私のSketchfab投稿3Dモデルにいいねをクリックしてくれる人々)はほとんどの人が鑑賞対象としての3Dモデル作成者です。そういう状況を客観視すると、自分自身はいくら観察記録3Dモデルであると主張するにせよ、世界各地の3Dモデル愛好者にたいするマナーとして、出来るだけ完成度の高い3Dモデル、鑑賞に耐えうる3Dモデル作成に留意することが大切であると思います。Thomas Flynnさんのコメントに感謝です。



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