ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 2
ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)のプロローグで社会崩壊を招く5つの要因をまとめていますので、抜粋してメモしておきます。
●崩壊を招く五つの要因
想定されうるすべての崩壊について理解を深めるため、潜在的な要因を5つの枠組みにまとめてみた。そのうち4つ――環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手――は、個々の社会によって重要性が高かったり低かったりする。5つ目――環境問題への社会の対応――は、どの社会においても重大な要素となる。
1 環境被害
特定の社会だけが環境の崩壊に見舞われる理由のなかには、原則的に、住民の並はずれた無思慮か、環境のある側面の並はずれた脆弱性か、あるいはその両方が含まれるものと思われる。
2 気候変動
今日ですら、人間は、好適な気候が数十年も続くと、それが恒常的な状態ではないことを忘れて――あるいは、過去の時代なら、そういうことにまったく頓着せず――作物の生産高や人口を増やそうとする傾向がある。やがてその好適な数十年が終わり、社会は、支えきれる以上の人口をかかえていることに、あるいは、新しい気候条件にはふさわしくない生活習慣が定着してしまっていることに気づかされるのだ。
3 近隣の敵対集団
社会に力があるあいだは、敵を退けることができるが、なんらかの理由でその力が弱まれば、敵に屈することになる。なんらかの理由のなかには、環境被害も含まれる。だとすると、崩壊の近因は軍事的制圧になるとしても、究極の原因――崩壊に至る変化の源――は弱体化を招いた要素に求めるべきだろう。つまり、生態学的な、もしくは他の理由による崩壊が、しばしば軍事的敗北の体裁をとるということだ。
西ローマ帝国の滅亡、アンコールワットに中心を置くクメール王国の滅亡とタイ王朝の侵攻との関係、ハラッパーを中心とするインダス文明の衰退とアーリア人の侵攻との関係、ギリシアのミュケナイ文明や青銅時代の地中海沿岸社会の滅亡と〝海の民〟の侵攻との関係など。
4 近隣の友好集団からの支援が減少するという問題
交易相手がなんらかの理由(環境被害も含む)で弱体化して、必需物資や文化的な絆を供給できなくなると、結果的に当の社会も弱体化しかねないというリスクが生じる。
5 さまざまな問題への社会の対応という遍在的な論点に関わるもの
社会が異なれば、同じ問題への対応も異なる。例えば、過去の多くの社会で森林破壊の問題が発生し、高地ニューギニア、日本、ティコピア島、トンガは森林の管理に成功して、繁栄を続けたが、イースター島、マンガレヴァ島、ノルウェー領グリーンランドは有効な管理策を施せず、結果として崩壊した。この結末の違いを、どう理解すればいいのか?
社会の対応は、その政治的、経済的、社会的な制度や、文化的な価値観によって異なる。社会が問題を解決できるかどうか――そもそも解決を図ろうとするかどうか――は、制度や価値観しだいだということだ。
●感想
自分の考古歴史趣味活動でこの5つの要因をいつも考えることにしています。
下総台地における奈良平安時代開発集落の消滅とか、大膳野南貝塚前期集落の終焉、後期集落の終焉など社会崩壊事象に対面したとき、この5つの要因をチェック項目として活用することにしています。
ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」の検討は地球規模で大小の社会を対象にしていて、普遍性のある有用情報であると考えます。
パワーポインスライドにおける社会崩壊5要因の紹介
ブログ「花見川流域を歩く」2017.11.28記事「古代開発集落が滅びた理由 印西船穂郷の謎(11/11)」参照
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