2021年7月1日木曜日

モノクロ画像のカラー化

 多くの発掘調査報告書の写真はモノクロ画像が主であり、カラー画像を多様しているものはほとんど見かけないのが現状だと思います。しかし遺物・遺構・遺跡の状況をモノクロ画像でみるよりカラー画像でみる方がはるかに判りやすく、観察しやすく、印象によく残るようになります。そこで一つの便法として発掘調査報告書掲載モノクロ画像をPhotoshop最新機能であるニューラルフィルター機能を利用してカラー化して、それがどの程度実用的に使えるか検討してみました。

1 有吉北貝塚発掘調査報告書掲載写真のカラー化


発掘状況写真

カラー化画像と参考カラー画像(類似構図の近接時点写真)を比較すると、色彩の感じ(色味)はあまりかわりません。モノクロ画像を使うより、カラー化画像を使った方が学習が楽になり、促進できることが確認できます。

なお、参考カラー画像には青色のブルーシートが2つ写っていて、そのうち画面下部のものはモノクロ画像にも存在しているようです。しかしこのブルーシートはカラー化画像には青色として表現されていません。


土器出土状況


土器出土状況


土器出土状況

色彩が元写真の色彩をどれだけ忠実に再現しているかということを不問に伏せば、カラー化画像は常識感覚的な色彩になっていて、モノクロ画像よりも判りやすく、親しみやすい画像になっています。

2 「伊那路」第11巻1号 別刷り「御殿場遺跡緊急発掘調査慨報(1967)」掲載写真のカラー化


顔面付釣手形土器出土状況

もともとの紙印刷における写真の状態が悪いものですが、違和感の少ないカラー画像になりました。折尺が黄色だったとすれば、その色は表現されていません。

3 山内清男(1967)「日本先史土器図譜」掲載写真のカラー化


勝坂式顔面付釣手土器 東京都杉並区で発見か?(重要美術品)


堀之内式土器

土器のカラー化は違和感の少ないものになっています。堀之内式土器の参考カラー写真は現物ではなく複製品(市立市川考古博物館展示)です。

4 戦前「鉄道連隊花見川架橋演習」絵葉書のカラー化


柏井橋梁架橋写真 軽便鉄道敷設演習 1927年頃


柏井橋梁架橋写真 普通鉄道敷設演習 1935年頃

干した稲が茶色に、植物が緑に、遠景・空が青に、工事現場がセピア色に彩色され、満足感は高くはありませんが、一応それなりのカラー化は行われたということが出来ます。

5 2021年6月22日撮影花見川早朝風景写真のカラー化


花見川早朝風景写真

カラー画像はナチュラルフィルター撮影、モノクロ画像はラフモノクローム撮影です。カラー化画像をカラー画像と比較すると、赤い花、ビニールハウスのブルーシートが発色していません。空の青は逆に鮮やかになっています。

6 感想

Photoshopニューラルフィルター機能によるモノクロ写真のカラー化では土(土層、地層)、土器、植物、空などは本来の色に近い色が再現されるようです。一方、花の赤、ブルーシートの青は再現されませんでした。このような結果から遺跡の発掘状況、土器の出土状況、地層断面状況などのモノクロ画像をカラー化することには一定の意義(価値)があると考えることができます。

資料(学術的資料)として使うことを考えなければ、学習用素材としてつかうのであれば、Photoshopを使ってモノクロ画像をカラー化することは価値のある活動であると考えます。

古い図書に掲載されているモノクロ写真のカラー写真原本は一般に存在しませんから、Photoshop機能がさらに進化すればカラー化は資料再生的な意味を持つかもしれません。

個人学習として発掘調査報告書掲載写真のカラー写真原本をその所蔵機関に閲覧申請することは、時間と手間がかかるという点でハードルが高く、よほどのことがなければ使える方法ではありません。

なお、以前印西市西根遺跡出土木製品写真、発掘状況写真を閲覧申請して、イナウ分析資料として有効利用させていだいたことがあります。


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