2018年7月13日金曜日

中国の未来-環境破壊と環境保護

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 19

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)を読んでその抜き書きをしたり、感想をメモしたりしています。この記事では「第3部現代社会 第12章揺れ動く巨人、中国」の感想をメモします。

1 揺れ動く巨人、中国
次の項目について詳しく記述してあり、ヨーロッパと中国を地理空間的、歴史的などの視点で比較しています。
・中国の重要性
・中国経済と環境問題
・大気、水質、土壌の汚染
・在来種を脅かす外来種と巨大ダム
・環境と人間への影響
・他国への影響
・中国の未来-環境破壊と環境保護
ひとつひとつの指摘は気がつけばすでに知っていたことも多いのですが、とても新鮮に感じました。
中国にはスペインやイタリアなどに該当する半島がないので国家統一が速かったなどの記述はこれまで聞いたことがないものでした。

中国の地理空間

中国が日本で廃品を回収して輸入していますが、日本にとっては便利で、中国では産業として稼いでいるのですが、中国の環境破壊がすすむ要因になっていて、日本人として複雑な心境になります。

中国に輸入されたゴミ ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用

隣国の様子がとても詳しく述べられていて、それがアメリカ人の記述であり、日本人として恥ずかしいような気持になりました。中国や韓国の様子を詳しく知ろうとしない自分が存在していることに気が付きました。無意識的に中国や韓国の現代社会に興味をもとうとしないのは、政治的環境からの影響を受けているのだと思います。

2 中国の未来
中国の未来について一番興味が湧きます。
中国の統一性の強みとリスクは、現代にも受け継がれており、中国はその環境と国民に影響を及ぼす主要な政策において、振り子のように揺れ続けている。その一方で、中国の指導者たちは、ヨーロッパやアメリカの指導者たちにはほとんど不可能な規模で、問題を解決することに成功してきた。例えば、ひとりっ子政策の強制による人口増加率の抑制や、1998年の全国的な伐採禁止などがそうだ。またその一方で、中国の指導者たちは、ヨーロッパやアメリカの指導者たちにはほとんど不可能な規模で、大混乱を招いてみせもした。例えば、大躍進政策での無秩序な変革、文化大革命での国家教育制度の解体、そして(一部の人の言い分によれば)三つの巨大プロジェクト(訳註・三峡ダム、南水北調計画、西部大開発)による新たな環境侵害などが挙げられる。
 中国がかかえる現在の環境問題の実情について、ただひとつ確信を持って言えるのは、時間的なずれと、勢いづいた被害の進行のせいで、事態は改善するよりも速く悪化するだろうということだ。悪化と改善の両方に作用するひとつの大きな要因は、世界貿易機関(WTO)に加盟した結果、中国の国際貿易の拡大が期待されることだ。これによって、関税が引き下げあるいは撤廃となり、車、織物、農産物、その他多くの日用品の輸出入が拡大する。すでに、中国の輸出産業は最終製品を海外へ送り出し、その製造に関わる汚染物質を国内に残す傾向がある。おそらく、これからそういう状況がますます募っていくだろう。ごみや車など、輸入品のいくつかはすでに環境を悪化させている。そういう状況も、さらに募るだろう。その一方、WTOに属するいくつかの国は中国よりもずっと忠実に環境基準を守るので、それらの国々に輸出品を受け入れてもらう条件として、中国は国際基準を採用する必要に迫られるはずだ。また、農産物の輸入が増えれば、肥料や農薬、生産性の低い農耕地の利用を減らすことができ、石油や天然ガスを輸入すれば、石炭燃焼による環境汚染を減らすこともできる。WTOへの加盟が諸刃の剣となりうるのは、輸入を増やして中国国内の生産を減らすことによって、単に環境被害を自国から海外へ移行させるだけになりかねないという点だろう。すでに、自国の森林伐採から木材の輸入へ移行することで、それは始まっている――つまり、他国にお金を払うことで、森林乱伐の有害な影響を引き受けてもらっているわけだ。

… … …

結末はどうなるのだろうか? 他の国々の例と同様、中国も、加速する環境被害と加速する環境保護運動のあいだで振り子のように揺れ動いている。その巨大な人口と成長し続ける巨大な経済、そして過去から現在に至る中央集権制のせいで、中国の振り子には、ほかのいかなる国よりも強い弾みがつくことになる。その結果は、中国のみならず、世界全体にも影響を及ぼすだろう。本章を執筆するあいだ、わたし自身の心も、気の滅入るような事実の連続に絶望したり、中国がすでに採用した迅速で徹底的な環境保護政策の実施に励まされて希望を抱いたりと、振り子のように揺れ動いた。国の大きさとその独特の政治体制によって、中国ではトップダウンの意思決定が、ほかの国々よりもはるかに大きな規模で機能してきた。ドミニカ共和国のバラゲール大統領の影響力など、すっかりかすんで見えるほどだ。わたしが思い描く最良の筋書きの将来では、中国政府はいずれ、環境問題が人口増加問題以上に重大な脅威であると認識することになる。そして、中国の国益のためには、家族計画政策と同じくらい大胆かつ効果的に、環境政策を実施すべきだという結論に達するだろう。」ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用

環境問題については中国は国益のために大胆な政策を実施するだろうというのが筆者の結論です。北京の大気汚染に対する対応などからはそうした筆者の最良の筋書きの結論が正しいのかもしれません。

なお、中国の覇権がアメリカを上回っていくような事態は、民主主義のない中国ではないだろうということをジャレド・ダイアモンドが日経取材に答えています。

参考 207.11.28日経 独裁中国 米に追いつけず

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