2018年7月27日金曜日

世界は一つの干拓地

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)の学習 23

ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、上下)を読んでその抜き書きをしたり、感想をメモしたりしています。この記事では「第4部将来に向けて 第16章世界は一つの干拓地」の感想をメモします。
この第16章が本書の結論になります。なお「追記アンコールの興亡」は別記事とします。

1 世界は一つの干拓地
本書の結論を次の項目で詳しく述べています。
・とりわけ深刻な”12の環境問題”
・問題解決と社会の持続可能性
・ロサンゼルス生活と環境問題
・反論への反論-問題から目をそむける数々の定説の検証
・過去と現在-その相違と相似
・希望の根拠-慎重な楽観主義者として

2 とりわけ深刻な”12の環境問題”
次の12の環境問題を詳しく説明しています。
・自然の生息環境
・野生の食糧源
・生物の多様性
・土壌
・エネルギー
・真水
・光合成能力
・毒性化合物
・外来種
・温室効果ガス
・人口増加
・一人当たりの環境侵害量

一人当たりの環境侵害量で例示されている世界夜景地図 ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用 

3 反論への反論
深刻な環境問題は全部を解決しないと解決にならないという考えが著者の基本にあり、ロサンゼルスでの生活を例にして身近な問題としてその解決必要性を著者は述べています。
そして、問題解決に抵抗する次の反論への反論を詳しく述べています。著者の考え方つまり文明崩壊に立ち向かう考え方が具体的にわかる記述となっています。
●〝環境と経済の兼ね合いが肝心〟
●〝科学技術が問題を解決してくれる〟
●〝ひとつの資源を使い果たしたら、同じ需要を満たす別の資源に切り替えればいい〟
●〝世界の食糧問題というものは存在しない。食糧はすでにじゅうぶんにある。われわれはただ、その食糧を必要な場所へ届けるための輸送問題を解決すればいい(エネルギーについても同様)〟
●〝世界の食糧問題は、コメその他の多収穫品種を生み出した「緑の革命」によって解決済みだ。そうでなくても、遺伝子組み換え作物によって解決するだろう〟
●〝個人の寿命、健康、財産――経済学用語で言うとひとり当たり国民総生産――などの常識的な指標で見れば、生活条件は何十年ものあいだ向上し続けている〟
●〝ちょっと周りを見渡してみても、芝生はまだ緑で、スーパーマーケットには食品があふれ、蛇口をひねればきれいな水が出てきて、崩壊が忍び寄っている気配などまったくない〟
●〝過去に何度、環境保護論者たちの大げさな破滅の予言がはずれてきたことか。もうそんなものには踊らされない〟
●〝世界の人口の増加率は落ちてきているのだから、人口問題はおのずから解決しつつある。このまま行けば、現在の人口の二倍以下のレベルで落ち着くだろう〟
●〝世界は増えゆく人口を無限に吸収できる。人が多くなればなるほど、多くのものが創り出され、ひいては富が増えるのだから、それは望ましいことだ〟
●〝環境への配慮は、先進国の気楽な金持ちにだけ許される贅沢で、貧苦にあえぐ第三世界の住民にそういうものを押しつけるべきではない〟
●〝環境問題が絶望的な結末を迎えるとしても、それは遠い将来のことで、自分は死んでいるから、真剣に考える気になれない〟

4 過去と現在-その相違と相似
過去の文明崩壊と現代人が向き合っている文明崩壊の大きさの違いについて次のように述べています。
そう、過去の社会が置かれた状況と今日のわたしたちの状況とのあいだに大きな差があることは事実だ。いちばんはっきりした差は、わたしたちがはるかに大きな人口をかかえていて、環境を侵害する力のある科学技術をはるかに多くかかえていることだろう。六十億を超える人間が、ブルドーザーなどの重機や原子力で武装しているのだ。それに比べて、イースター島では、最高でも数万の住民が石の鑿と人間の筋力を振るっていたに過ぎない。なのに、イースター島民は自分たちの環境を痛めつけ、自分たちの社会を崩壊の瀬戸際まで追い込むことができた。この差は、わたしたちにとって、危険を小さくするどころか、大きく膨らませる要素だと言える。」ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用 
著者は地球規模での文明崩壊を懸念しています。

同時に個別地域での崩壊も次のデータを示して説明しています。

政治問題を内包する社会と環境問題を内包する社会 ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用 

同時にオランダやティコピア島、江戸時代日本の例をあげ世界が相互依存社会になっている様子を述べています。
そういう利害の衝突を最小限に抑えようと努めている社会の好例が、オランダだろう。オランダ人はおそらく、世界でいちばん環境保護意識の高い国民であり、環境団体への加入率も高い。
オランダ人はみんな、ポルダーで肩を寄せ合っているんだ。金持ちは安全な堤防の上に住んで、貧乏人はポルダーのいちばん底、というようなことはない。堤防とポンプがだめになれば、みんないっしょに溺れてしまう。
今日の世界は、ティコピア島や江戸時代の日本と同様、全体がひとつの自足し孤立した社会集団なのだ。ティコピア島民や日本人のように、わたしたちは今、助けを仰いだり、問題を輸出したりする相手(ほかの島、ほかの惑星)などないということを認識しなくてはならない。手持ちの方策、内部の努力で切り抜けていくしかないということだ。」ジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」(草思社文庫、下)から引用

5 希望の根拠
最後に迫る地球規模の文明崩壊に対して、その問題が解決不能の問題ではないことと、現代では過去の失敗に学ぶ機会に恵まれていることを述べています。

6 感想
ア この図書を読んで地球規模の文明崩壊が10年とか20年とか30年とかくらいの時間後にあり得ることに現実感を持つことができました。
イ この図書で扱われている事例は全て農業社会以降の例であり、余剰生産物が生れ社会の階層化が進んだ事例であることに気が付きました。日本の考古歴史でいえば弥生時代以降の文明崩壊(社会崩壊)にこの図書の分析方法を適用できると考えます。
奈良平安時代下総台地の開発集落崩壊検討でこの図書の考え方を参考にしましたが理にかなった検討であったとふりかえります。(「奈良・平安時代に開発した印西の船穂郷(戸神・船尾)の謎~大結馬牧の姿が見えてきた~」参照)
ウ もともと縄文時代集落消長の要因を知る参考にこの図書が利用できないだろうかと考えて読みだした図書です。そういう意味では参考にはなりますが直接的に期待した結果はありませんでした。縄文時代集落の消長(崩壊)の参考文献にこの図書はならないことがわかりました。余剰生産物のない、自然法則がより直接支配する社会の消長を扱った参考文献を見つけたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿