2019年2月19日火曜日

展示土器ガラス越し観察の技術限界

現在、加曽利貝塚博物館の企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器の学習をしています。素晴らしい企画展であり、縄文中期後半の社会崩壊を考える時、またとない土器学習の場となり、感謝、感謝です。

土器学習を始めたばかりであり、右も左もわからないのですが、展示土器のガラス越し観察というものがどのようなものであるのか、その技術的限界が判ったような気がしますのでメモしておきます。

1 検討対象土器
加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器No.9を検討対象とします。
ブログ花見川流域を歩く2019.02.18記事「加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器の観察」参照
No.9土器はショーケースの中で前列真中でいわば特等席に展示してあります。

No.9土器の展示位置

2 No.9土器の口縁部文様と展示会場における見え方

No.9土器の口縁部文様

No.9土器口縁部文様の展示会場における見え方
「2つの渦巻文が細い隆帯で連結」の1つと「円形区画文とそれを挟む2つの楕円形区画文」の半分程度が見えます。
「2つの渦巻文が細い隆帯で連結」のもう一つは裏側で完全に見えません。
「長楕円形区画文」は視覚的にはその大半が見える位置にありますがガラスの反射がきつく、同時に照明が暗く有効な観察が困難です。
視覚的には220~230度くらいの範囲での観察を期待したいところですが、現実は180度くらの範囲で有効な観察ができました。

3 3Dデータの作成範囲

作成した3Dデータ
ぎりぎりの端からの写真を含めた多写真を使い3Dデータを作成しました。写真が重なっている部分しか3Dデータは作成できません。結果的に口縁部文様は150度くらいの範囲をカバーしています。しかし照明が暗い部分でガラス面反射がある場所(長楕円形区画文の場所)の精度はあまり良くないようです。

4 感想
展示土器観察の技術的限界がだいたいわかりました。
視覚的に見えるべき場所も実際の有効的観察ができない場所があります。
正面180度の観察を基本として、側面の観察を少しでも広く稼げればラッキーという気持ちになっていれば間違いありません。
口縁部文様はその全体像はもちろん、本来観察すべき主要事象も観察不可能な場合があると割り切りざるをえません。
展示土器観察の技術的限界を踏まえることにより、つまりある種の割り切りを気持ちに導入することにより、より効率的に展示土器観察を行うことにします。同時に主要土器についてはその土器観察記録(調査記録)の閲覧が必須であることを確認しました。

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